○伝統木造建築は、過酷な自然災害への備えとして、損傷しても全解体などせずとも部分的な修理によって復旧できるように当初から構築されている。
○伝統木造家屋は地震で被害を受けても、焼けさえしなければ大工棟梁や鳶職の手で復旧されてきた。
○濃尾地震から百数十年を経た現在でもなお、木造家屋の耐震化については、伝統的な土壁や貫を廃して、筋違いや金物工法にすべきであるという「洋風思考」と、逆に伝統構法を尊重してこれに学んで将来の建築に活かすべきであるという「和風尊重」の考え方に大きく乖離したままで、むしろ溝は一層深まりつつあるように見える。
○曽根や辰野など帝国大学の権威筋は、日本の伝統木工法には耐震性がないとの立場から、和風住宅を「金物」と「筋違い」を主体とする洋風木造工法に転換すべきであると主張したのに対し、野口孫市は、和風建築に耐震構造としての優れた特性を見出し、これを高く評価した。