風水とは、人間とその環境との関係を示した思想であり、地学であると同時に摩訶不思議な伝統でもある。

風水は、土地の動と静を理解するための方法。

風水は、中国でおこなわれていたあらゆる地相占いの要素をとりこんで発展した。かつては、道教や儒教の思想にもとづき、墓地や家相を判断するのに利用された。「風水」とは「天」と「地」。人間は天と地の中間にいる存在であり、そのバランスとることができれば栄えるといわれる。彼らは、いわば、建築学、地学、都市計画、医学において自然環境に重きを置く専門家であったといえる。

住居や都市建設あるいは戦争において、土地の善し悪しを判断する「相地」という言葉がある。古代の中国人は、相地を日常的に行うことで、人間が住むのに最適の場所を選別していた。そうした行為が、後の風水の基本原理となっている。

周の時代(紀元前1046年~前256年)は、亀甲羅や獣骨を用いた占トで決められていたが、戦国時代(紀元前475年~前220年)になると「易経」が普及し、道教や儒教の思想、陰陽、五行、八卦の理論が形成され始めた。風水の文書記録は、漢の時代(紀元前206年~後220年)になってから。「風水」という言葉を最初に使用したのは、晋(265年~420年)の時代の郭璞(かくはく)だという。(著書:「葬書」)宋の時代(960年~1279年)以後、風水は大きく2つの学派にわかれる。物理的世界を主観的に考察する「巒頭波」(らんとうは)と、風水羅盤を用いて目に見えない世界を客観的に考察する「理気派」である。実際に土地の吉凶を占う際には、双方の考え方が利用される。

人は、自然に近づくほど健康になるという。先人の知恵である「風水」はある程度は建築基準法にも取り入れられているし、建築工法も変化しているが、自然に対する本質的な考えは大いに参考になる。技術も進歩したが、建築や土木も自然に逆らうほど対策が必要になり、災害リスクは高まる。現代の環境の中で、自然の恩恵を受け、自然と共に生きるという根本的な考え方が今こそ見直されるべきであると思う。

※郭璞(かくはく)の著書:「葬書」によれば、「風は気を散らし、水は気を留める。昔から、気は集め、散らさないようにせよと言われている。つまり、気を流れさせ、ある場所に溜めるのである。そのためこの業(わざ)を「風水」と呼ぶ」

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