■建築の原点 ロージェ(1713年~1769年)「原始の小屋」1755年
建築理論家のマルク=アントワーヌ・ロージエは、著書『建築試論』において、理想的な建築の原点として示されたのが「原始の小屋」です。樹木は大地からまっすぐ生え、その上方で枝が水平と三角屋根状に架け渡される。これこそ必要に基づく単純明快な自然の原理であり、建築もその原理に沿ってつくられるべきだというのです。こうして、円柱、エンタブレチュア、ペディメントの三要素が建築の真なる表現として抽出されました。
建築の始原の象徴として、4本の木とその上の合掌が描かれています。古典主義の原点であるギリシャ神殿の原型となる小屋のイメージです。実際、パルテノン神殿の屋根を支える斜め材は木造(垂木:たるき)で、その上に薄い大理石の瓦が載せられていました。ゴシックの大聖堂も、天井を石のをヴォールトでつくりながら、屋根は木造で架けています。
ヨーロッパでは、そもそも壁を木造でつくろうという発想そのものがなく、レンガで壁をつくり、木で屋根と床と2階の床をつくった建物がほとんどです。日本建築もこの原始の小屋と似ていますが、気候風土の歴史により、日本建築が生まれてきたのですね。