■サヴォア邸1931 (ル・コルビジェ 1887-1965)

僕は、大学生になりたての頃、この建物を見て感動したのを今でも覚えています。サヴォア邸は、実現された近代建築5原則(ピロティ 屋上庭園 自由な平面 水平連続窓 自由な立面)の建物として、紹介されていました。最大の特徴は、水平な床、構造体としての垂直な支柱、そしてファサードを意識した壁、という建築における3つの基本要素を明確に表現している点であると。近代建築家ル・コルビジェによってフランス、パリ郊外のポワシーに建てられたものです。「サヴォア邸」は、建築された年がなんと1931年、日本では昭和6年、今から91年前のことです。当時、世界中の建築家が、この先見の明を示した建築物を見て、相当な驚きと賞賛を持って迎えたというのもよく理解できます。世界遺産として登録されています。

受験勉強から解放された私にも衝撃的でした。そして、感動することの素晴らしさを初めて知ったのです。

自然豊かな緑の森の中で、庭園付きの建物がそのまま持ち上げられて空中浮遊しているという感動。陸地という外部空間から持ち上げられたプライベート空間の中にも外部空間があり、部屋の中から見るとみごとに一体化しているところにも感動。西洋は石造壁の文化であり、そのために縦長の窓になってしまう。だが、これは違う、RCラーメン構造だ、梁が見えない2重の床スラブになっているのでシンプル。しかも柱を壁の内側に隠したキャンティレバー(片持ち)だ。壁は構造体でないから、自由に横長につながる窓がつくれたのだ。ダイナミックなデザイン。それにしても細い柱だ。幾何学的だし。そんな風に感じていました。有名すぎる建物なので、解説は他に任せるとして、その空間を紹介しておきます。椅子も有名です。

ル・コルビジェは、スケッチを用い人間の体勢はシートデザインに反映されるべきだという考えを打ち立て、1929年に、従姉妹のピエールとシャルロットペリアンとの共同作業で家具LCシリーズを発表します。建築におけるシンプルで機能的なデザインは、家具においても遺憾なく発揮され、今なおカッシーナ社からシリーズ化で販売されています。

ル・コルビジェの代表的家具LC2、大いなる快適と名付けられたこの作品は、彼の代名詞にもなっています。ル・コルビジェの建築アイデアの元となるモデュロール構成による、水平、直角、垂直がこの椅子のデザインモチーフです。シンプルにして無駄のない、機能性とデザイン性を追及した先にあるのは、まさしくグランドコンフォートです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です